海を見に行くが…(Mar. 17, 2010)

 9時過ぎに家を出た。久しぶりに海が見たくなったのだ。
 気温が低いのが気になっていたが、走り始めると思ったよりも寒い。しかし、南下すれば暖かくなるだろうと期待して我慢することにした。
 中央自動車道長坂インターから高速にのり、中部縦貫道鰍沢町まで一気に走った。前回のツーリングでは韮崎から国道52号線を早川町辺りまで走って引き返したが、その辺りまでしか到達できなかったのは途中寄り道をしたからで、今日はそのときの反省を踏まえ、ひたすら静岡目指すことにする。
 国道52号線はずっと混んでいるような印象があって敬遠していたが、工事渋滞が何カ所かで見られただけでさほど交通量は多くない。富士川の風景はどちらかといえば単調で、むしろ通過するさびれた町の風景の方が趣がある。
 しかし、寒い。ジーパンがツーリング用のものではなく、普通に立って歩いている分にはちょうどよい長さだがオートバイに跨がり膝を曲げると裾が持ち上がり、足首の辺りからスースー冷たい風が入っている。どうやら空模様もあやしくなり、太陽は隠れ、南アルプスの山々がいかにも寒々と見える。
 寒さが堪え難く道の駅とみざわで休憩する。温かい缶コーヒーを飲む。SRの隣に山梨ナンバーのビューエルが停まった。やはりライダーは体を強ばらせている。話しかけると、山梨は海がないですから、ツーリングというと静岡方面へ来てしまいますという。その気持ちはよくわかる。ぼくも同じように思って走ってきたが、彼の話を聞いているうちに、そういえば、八王子も海から離れてはいたけれども、やはり山梨は海から遠いなあと改めて思う。しかも、他にもルートがまったくないわけではないけれども、北杜市からだと富士川に沿って下る単調なルートを選ばざるをえないだろう。湘南の海も遠くなったなあと思うと急に寂しくなった。
 時刻は11時、あまり寒いのでもう引き返そうかなとちらっと思ったが(当然帰途が辛いだろう)、ここまで来て引き返すのはいかにも惜しい。やはりとにかく一目海を見てから帰ることにした。
 気温はさらに下がったように思える。しかし、早川町から先はいつも52号線の対岸にある県道ばかり走しっていたので、久しぶりの52号線はそれなりに新鮮な気持ちで走れた。峠もあり、山々が迫っていて地形も変化に富んでいる。
 清水市に到着して、国道1号線に合流しようとさらに市街地を南下していると、やがて建物と建物の間に海がちらっと見えた。気温が上昇したことに勇気を得て、特に目的地を考えずに走ってきたが、三保の松原までとにかく行って見ることにした。
 土産物屋などのある駐車場にSRを停めて、時刻を見ると12時半である。駐車場は明るい日差しが降り注ぎぽかぽかしているので気持ちも浮き立つ。しかし、駐車場に車は停まっているが、店などで買い物をする客の姿はほとんどなく、春の陽光が満ち渡っているだけにかえってみじめである。陽気な音楽が流れているのに誰も踊らず暗く俯いているといった感じである。
 海を見たいと思って走ってきたが、残念ながら三保の松原を見たいわけではない。初めて来た場所ではないし、風景も想像がつくので慌てて行く必要もない。とにかく腹ごしらえをしようと、近くの食堂で桜えびのかき揚げ丼を食べる。食堂には無数の色紙。三保の松原の売りはもうそれしかないかのようだ。
 帰途は富士川の対岸の県道を早川町まで走り、その後は延々と52号線を韮崎まで走る。金精軒で草餅ときんつばを買って帰る。