FLTRロードグライドのお引越しー写真のない日記(Mar. 26, 2010)

 今朝8時、居間の窓を開けてウッドデッキに出ると、昨夜の雨が氷っていた。青空は広がっているが風は冷たい。
 4月1日から4ヶ月間マンションは大規模修繕工事に入り、マンションの周りに足場が組まれるので車の移動を求められたし、FLTRも移動せざるをえなくなった。車については、施工会社が代替駐車場を近くに探してくれたが、オートバイについては駐車場所を自分で確保しなければならず、生活の主軸はすでに八ヶ岳南麓に移ったので、最初からの予定通りに、この際だからFLTRも引越しすることにしたのだ。
 長坂を10時過ぎの電車に乗り、高尾には12時半ごろ着いたが、高尾駅南口のカメラ店にフィルムの現像を頼み、古本屋文雅堂のおやじとおしゃべりをしながら本を漁っていたのでマンションに着いたのは1時半だった。着いて早々、息子に手伝わせて2箇所のベランダの植木鉢や粗大ゴミを片付ける。ベダンラの床の補修工事も行われるので、室外機は業者に頼まざるをえないが、ベランダのものはすべて片付けなければならないのだ。女房が仕事で帰宅が午後9時過ぎになるというので夕食も作る予定だったが、空模様が怪しい。雨が今にも降りそうなので夕食作りは止めてなるべく早い時間に帰ることにした。しかし、準備をしていると、息子が片倉のブックオフへ行きたいという。車は女房が乗って行ってしまったので早く帰りたいがオートバイに乗せて行くことにした。実は、八ヶ岳に移ってから本屋に飢えており、ブックオフでも何でも本屋へは頼まれなくとも行きたかったのだ。オートバイの出口に軽トラが駐車していて出られず、クラクションを鳴らしてどこかの部屋で工事をしていた職人を呼び出す。
 しかし、かなり長い間エンジンをかけなかったにもかかわらず一発で点火するのには感動する。最初の爆発音が小気味いい。息子を後ろに乗せて何となくぎこちなく走り始めるが、ドコドコという鼓動に、ああ、やっぱりいいなあ、と長らく忘れていた感覚にさらに感動する。
 片倉のブックオフでは岩波の寺田寅彦全5巻を525円で手に入れる。「忘れた頃に寺田寅彦」だったか、そんなタイトルの本もあるが、寺田寅彦は忘れていてもまたいつか必ず読みたくなる。文庫は持っているはずだし、青空文庫でも多くが読めるが、目に留まったら買わずにはいられない。他には講談社文芸文庫石川淳と中上健二。どちらも105円だ。息子はCDを3枚。どうやらまたメタルのようだ。CD店でバイトをしていても他の店でまだCDを買おうというのだから、本とCDと対象が違っても、親子で同じことをしていることがおかしい。
 寺田寅彦をサイドケースに入れて蓋をしようとしたら蓋がしまらない。ここにはETCの車載機も入っており、カードも装着してあるので蓋が閉まらないというのでは無用心だ。安心してツーリングもできない。帰宅が遅くなるのも覚悟して、高速にのるまえにコクボモータースに寄って直してもらうことにした。息子を家に送り届けてから、さらにあやしくなった空模様の下コクボモタースに向かう。
 修理を頼むと、時間は大丈夫ですかと聞かれたので1時間ぐらいならと答える。ケースに寅彦が入っているのだから待っている間に読めばよかったのだが、すっかり寅彦のことを忘れてぼんやりしてしまった。同僚の奥さんが出版した時代小説を電車の中でずっと読んできてあと数ページ残すのみというところまで読み進んでいたが、防水バックの中に入れてきつく縛ってしまったのも迂闊なことだった。しかし、保険のセールスマンか何かと商談をしていた社長が商談を終え、看護婦だという中年の女性ライダーもやってきて、四方山話が始まったので退屈がまぎれた。女性ライダーはコクボモータースのチャプター仲間とのみツーリングに行くらしい。だから5年も乗ってるのにまだ走行距離は3千キロだとか。オートバイを見せてもらったら何と3年前に盗まれたダイナと同じではないか。私はちゃんと買いましたよと女性ライダー。
 修理には結局1時間半ぐらいかかった。まだ保障期間中なのでクレーム処理ですむから無料だという。修理してくれた若い人が、それからもう一箇所あるんですがと、エンジンに点火して、異音があるでしょう?と音を聞かせ、マフラーの排気口を辺りを上から押さえて、ほら、異音が消えたと思いますがマフラーの接合箇所のラバーが劣化しているのですという。そういえば、何か以前よりも音がやかましく感じていたのだが、ラバーの劣化だとは思いもよらなかった。これもクレームを出してラバーを送ってもらいますという。
 試乗したいと来た客の対応をしていた店員が店に入ってくるなり、雨が来ましたよという。上着は防水機能があるが、ズボンはジーパンなので雨がひどくなる前に急いで帰ることにした。まだ雨は気にならない程度だ。八王子インターのETC入り口を通過しようとしたが、ゲートがあがらない。スピーカーからエラーがでました、電波障害のようです、チケットと取り、係員のいる出口でETCカードとチケットを渡してETCによる通過だと言ってくださいという声が聞こえた。仕方がないのでスタンドをおろして、オートバイを降りてチケットを取る。そういえば、前回は 出口でゲートがあがらず焦ったが、コクボでETCの不具合についてもチェックしてもらうのだった。
 夜の中央高速をきもちよく飛ばす。非力なSRにばかり乗っていたから、このエンジンのパワーのもたらす快感をすっかり忘れていた。ほんとうにどこまででも行けそうだ。笹子トンネルの手前で工事渋滞があり30分ほど時間をロスしたが、それからはまた順調に流れるようになった。降るともなく降っていた雨も甲府南辺りではもう完全に止んでいた。しかし、寒い。体感的には零度近いのではないか。双葉SAで出口で手間取らないようにETCカードをサイドケースから取り出してチケットの入っている上着の胸ポケットに入れる。そのためにグローブを脱ぐと、指先を冷気が押し包む。温かいコーヒーでもと思ったが、あわててグローブをはめて出発する。気温はさらに下がる。ライトに照らされて路面が白く光ると一瞬緊張が全身を走る。SRの引越しのときも恐ろしく寒かったが、そのときと負けず劣らずだ。途中の雨が、長坂辺りでは雪だったということが何度かあったので不安だったが、インターから小荒間へ向かう県道は完全に乾いている。これならば凍結の恐れはないだろう。