まるで「スタンド・バイ・ミー」の少年たちのようだ(Apr. 12, 2010)

 午後4時過ぎ、携帯でメールをチェックすると、CabinのYさんからのメールが入っており、行方不明のグレコのことを店のお客にもネットを通じて心当たりを尋ねたところ、ネコの死骸を見つけた人がいて、お尋ねのネコちゃんに似ているように思うと連絡して来たとある。場所はわが家からさほど遠くないところで、3日前にも探しまわった場所だ。
 グレコだと確信した。仕事は残っていたが、もう仕事どころではないので駅に急ぐ。駅は高校生で溢れていて、とくに女子高生のおしゃべりがかしましかったが、それも何か遠く感じられる。電車の中では、涙を流したい気持ちと、グレコとの山荘生活を夢見てグレコを小荒間まで連れてきた人間、つまり自分に対する怒りに燃えていた。
 携帯が振動する。グレコ母さんからのメールで、今、西八王子から電車に乗った、小淵沢まで行った方がいい、長坂で下りる?とある。グレコ母さんに死骸が見つかったことを伝えるべきかどうか悩み、結局伝えないことにした。電車の中で一目も憚らず泣かれては困る。困るというよりもかわいそうだ。死骸を確認してからでもよいだろう。それにまだグレコと決まったわけではない…。
 長坂駅に降りると冷たい雨が降っている。家に向かいながら覚悟を決める。取り乱さないことにしよう。家に着くと、グレコの死骸だったら包んでやろうとタオルを出し、車も入れないことはない場所だが狭い砂利道なので途中から歩くことにして、死骸を運ぶためのバッグを用意する。
 ウスロウタスという和風レストランの近くに車を停め、Yさんのメールの指示に従って暗い杉の森の中に続く道を行く。二つ目の三叉路の所に赤い鶏の標識が立っているが、その少し先の右側の草むらになかに遺骸があるという。蛍光灯を持ってきたけれども、点灯することも忘れて、草むらに目を凝らす。何かそれらしいものがあったけれども、違うような気がして、さらに先を探すが死骸はない。やはりあれがそうだったかともどって草むらに入り、今度は懐中電灯を点けて光を向けると、ネコの死骸である。
 グレコは背中から見れば灰色で腹部は白い毛に覆われているが、同じような配色である。背中の灰色が黒に近く見えるのは雨にびっしょり濡れていたり暗いからだろう。しかし、面変わりしているし、グレコでもあるように見えるし、違うネコのようにも見える。死骸を起こして確かめようと体に触れると、首輪に指が触れた。グレコではない!逃走する前日にグレコ用の首輪と迷子札を買ったのに付けるのを怠り、ああ、迷子札を付けてやっていれば、保護されたときに連絡してもらえるのになあとずっと後悔していたのだが、死骸に首輪がなかったことで体の緊張が一気に緩んだ。
 ネコの死骸はよく見ると、眼球が陥落していたし、腰のあたりに大きな穴がある。カラスにでもつつかれたのだろう。暗かったし、シャベルも持ってこなかったので放置してきたが、埋葬してやろう。
 しかし、Yさんといい、皆さんが同情してくれて親切にしてくれるのがありがたい。