越前海岸ツーリング(2日目)1

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2008年9月10日(水)
 6時半ごろ目が覚める。体に疲労が残っている。
 朝食は8時にしてもらったので散歩写真することにした。女将に散歩してきますというと、道に出て右に行き、最初の通りを左、そして次の通りを右に曲がれば朝市をしているという。
 道に出て右に行けば、寺町通りである。たしかに、これでもかこれでもかという感じに様々な宗派の寺が並んでいる。松の巨木も目立つ。お寺の間に床屋などが看板をだしているのもなかなかいい。
 七間通りという福井の伝統民家や商店が並ぶ通りでは朝市が行われていたが、思ったほど店も人も出ていなかった。むしろ歩道と車道の区別のない真っ直ぐな広い通りは強い陽射を浴びてがらんとしていた。市は道路の片側だけで開かれていたが、陽射を避けるために違いない。美味しそうな新鮮野菜が並んでいたが買うわけにはいかない。饅頭の類も売っていたが朝食前だ。
 寺町を散策する。挨拶をしてくれるおばあさんとすれ違う。ゴミの集積所にペットボトルを置きにきた女性、鞄を背負った中学生、看板を拭いている床屋さん、閑静な寺町にも普通の生活がある。お寺の門はどこも開かれていて、善男善女の参詣を待っている。
 宿に帰ると玄関に老婆がいたのでしばしおしゃべりをする。朝市があまり出ていなかったというと、町の人たちのもので観光客のためではないのだとのこと。現に娘は今朝市に買い物に行っている、ほら、帰ってきましたよ、というから見れば、女将が自転車のバスケットに野菜を大量に積んでちょうと門を入ってくるところだった。
 寺町については、大野は城下町ですから、お城の周囲に寺を建てて防御の役割をさせたのですよと教えてくれる。この辺りは田圃だったんですけれども、先々代が別のところから移ってきてこの家を建てた。松などの木も昔の家から移したのですという。
 昨夜夕食を食べた一階の部屋で朝食を食べる。襖越しに隣の部屋から男性の話し声が聞ける。散歩から帰ったときに玄関に男性用の靴が二足並んでいたが、ぼく以外の客もいたようだ。朝食も丁寧に作られており美味しかった。
 すでにかなり気温が上がっているし、今日はハードな一日になりそうなのでゆっくりもできない。午前9時前、ペットボトルに道路脇の飲料水をつめて出発した。
 今夜の宿はまだ予約もしていないが京都府の美山と決めており、それを考えるならば大野から真西に向かうべきなのだが、今日は国道157号線を北に向けて走ることにしていた。というのも、加賀から小浜までの海沿いの道を走れば、青森から山口県までの日本海岸の沿道を完全走破することになるからだ。別段、そのような記録をねらって走っていたわけではないが、気がつけば未走の場所は越前海岸とその前後だけになっていたのだ。
 というわけで今日のルートは157号線を大野から北上し、途中県道17号線に左折、九頭竜川に沿って勝山市を抜けて、永平寺町から国道364号線でさらに北上する。途中永平寺の標識を目にして気持ちが動いたが、今回は諦めざるをえないようだ。
 国道364号線は山道で、交通量の少ない快走路であったが、どちらかといえば単調な道である。温泉の少ない福井県にあってよく知られている山城温泉などが沿線にあるものの、誰かが言うように、享楽的な方面に走った温泉というべきかも知れない。
 364号線から先はナビにまかせて、越前海岸を走るために、加賀で国道305号線に出る。しばらく波静かな北潟湖の湖面を見ながら走り、三国町で県道7号線に右折し、東尋坊方面に向かう。ひょろひょろのびた松林の間を走っていると海が見えた。駐車場があったので休憩する。オートバイが2台、車が1台停まっていた。
 陽射は耐え難いが、海風はさわやかである。10メートル下に波打ち際があり、カメラを構えたライダーが二人と、レンズの先には海女がいた。車の運転手が海女さんに向かって「何が獲れるのー」と大声で叫んでいる。それに対して海女さんがアワビと何とかと答えたが、運転手は聞こえなかったのか再度大声を出した。結局、カメラを持ったライダーに何を捕っていたか教えてもらっていた。
 松の木陰がすずしいので、家を出る前の晩に用意した美山の民宿の電話番号を印刷した紙をタンクバックから出して、さて、今夜はどこにしようか決めることにした。どこも宣伝文句は似たり寄ったりである。ここはもう勘に頼るしかなく、結局、木むらという民宿に電話したらOKだったのでそこに決めた。ナビで一応到着時間をチェックしてみると、午後2時半ごろと表示された。3時間ぐらいということだ。くねくねと続く海岸線を行くのだから、その時間に着くわけはないが、6時ごろには着けるのではないだろうか。
 東尋坊入り口があったがパスする。学生時代に一度行ったことがあるが、あまりにも俗化していたので呆れてほとんど何も見ずにさっさと帰ってしまった。そのときの苦い思い出があるからである。しかし、二度目に東尋坊入り口が目に入ると、やはりせっかくここまで来たのだからと好奇心が抑えがたくなったものの、御土産物屋が軒を連ねる様子を見てやはりユーターンしてしまった。
 しばらく海は見えなかったが、福井市辺りから右側にすばらしい海の眺めが続くようになった。ところどころで思わずセングレンドを路肩に寄せてエンジンを切らざるを得なかった。多少もやっているが、それとも真昼の陽の光が乱反射しているのかもしれないけれども、海は空を映して青く輝いていた。すぐ眼下の海はどこまでも透明で、ゆらゆらと海底を映していた。
 午後1時、昼食は海岸の崖の上にあり、海を展望できる店で刺身定食1500円を食べた。近くには水仙ミュージアムなどがあり、昨年だったか訪れた女房に薦められたけれども、水仙は季節外れだし(ただしドーム内では年中見られるようだ)、先を急ぐのでやめた。
 あとは淡々と国道305号線を海に沿って南下するばかり。新潟の海岸ほどではないけれども、いつもながら荒涼としている海岸の風景が旅情を深める。遠くかすんで見える岬のごく薄いシルエットもまだまだ旅路は果てしないという思いを募らせる。
 と、急に人家が建て込むようになった。道路の幅は変わらないはずだが、両側の建物が迫ってくるように見え、狭い路地を走ってるような感覚になる。建物は潮風に錆びたような色をしており、古びた遠い昔の町に帰ってきたようだ。越前町だ。
 越前町を過ぎると、305号線はほとんど曲線がなくなる。夕日が沈む頃、こんなどこまでも真っ直ぐに続く道を走ったらどんなに気持ちよいだろう。国道305号線は河野村でほぼ直角に左に曲がり内陸部に切れ込むが、河野河岸道路という有料道路がそのまま海岸線を走っているようなのでその道を選んでみた。ゆるやかにカーブする道が快走路が続く。ところどころ橋脚の上を走ることになる。有料ゆえだろうか、ほとんど走っている車はない。料金所で620円支払ったときに見れば、お蔭様で9月30日からいよいよ無料になりますとある。敦賀湾の向こうに敦賀半島が横たわっているのが見える。
 有料道路は国道8号線と合流。8号線は海岸から離れるようなのでコンビニの寄って冷たいカルピスを飲み、ナビの目的地を敦賀半島に県道33号線沿いの適当なところに設定する。地図を見る限りでは、敦賀市市街はかなり道がごちゃごちゃしており、迷子になり半島に至る道が見つからないのではないかと思ったのだ。
 ナビのおかげで敦賀半島へ通じる県道33号線に見事に乗れた。ずっと市街地が続いたが、ある場所で弧を描く海岸の風景が心を打ったので写真撮影した。時間があればゆっくり砂浜に寝転がりたいような場所だった。
 敦賀半島の先端まで行きたかったが、半島の真ん中辺りで半島を横切る33号線をそのまま走り、半島の西海岸に抜けた。
 西海岸に抜けると、前方の湾の向こうに美浜原発が見えた。手前はベージュ色の浜が広がり、西日を浴びて水遊びや釣りをする人たちが見られた。夕刻ののどかというかどこかアンニュイな時間に浸っている人たちがうらやましい。こちらはまだやらねばならないことが残っているのだ。次は三方湖を走らねばならない。