富士山を見ながらツーリングを楽しむ

 目覚めればもう午前零時になろうとしている。遅い夕食後疲れから眠ってしまいこの体たらくだ。昔は、といっても10年ほど前までは、1日数百キロ走っても平気で、むしろ楽しかった行程を思い出しながら長大なツーリング日誌をつけたものだが、今は250キロ程度で精魂尽きたかのようだ。
 風は冷たかったが五月晴れの最高のツーリング日和だった。ちょっとしたトラブルがあって出発が10時になってしまったので長野県の県道12号線を走る予定を山梨県南部への旅に切り替えた。中部横断道がだいぶ先まで開通になったというニュースをだいぶ前にニュースで知ったものの走る機会がなかったからである。
 中央道須玉インターから高速にのり、双葉ジャンクションから中部横断道をとりあえず開通しているところまで行くことにした。空いている。全面開通の暁には需要が見込まれるのかも知れないが、そして連休中はもっと交通量があったのではないかと思うが、もったいないくらい空いている。その分快適に走れるものの、長いトンネルも多く、どちらかといえば、目的に少しでも早く着こうということでもなければ走り甲斐のない道である。とりあえず下部早川インターまで走った。
 下部温泉に立ち寄ってみた。ここも連休の後だからなのからか閑散としており、まったく観光客の姿は見られなかった。
 下部温泉からはいつものように国道52号線は避けて、富士川の左岸、県道10号線を南下する。身延の街も人影はない。やはり道は空いている。無理な追い越しなどはせず、前を走る車との間に充分な車間距離を置き、春の富士川の流れを見ながら走る。
 稲子というところで国道469へ左折。しばらく走ると平七という蕎麦とうどんの店があったので昼食を食べることにした。おばちゃんたちがやっているごく普通の食堂である。駐車場でこちらをちらっと見て先に入ったおじさんが、ハーレーだね、何cc?と聞くので、883ccで、ハーレーではもっとも小さな排気量ですと答えると、俺も、乗っているんだよという。良い人に出会った。朝霧高原という標識を見て走ってきたが、初めての道だし、山が深くなるような雰囲気だったので先の道路状況が不安だったのである。狭い道だが富士宮に抜けられるという。おじさんが調理場にいるおばさんにダンプは通らないよね?と声をかけると、一人のおばさんが道路が崩落したかなにかして(よく聞き取れなかった)ダンプは通行禁止だと胸の前で腕でバッテンを作る。おじさんが温泉やっている?とまたおばさんに聞くので近くに温泉があるんですかと問えば、ほら、あれと窓の外を指さす。iPhoneで地図を出し、おじさんにもう少し詳しく道を聞く。道が狭いから気をつけてと言う言葉に送られて店を出た。
 道路は確かに狭い曲がりくねった暗い山道だった。幸いオートバイが一台、自動車が一台下って来ただけだった。下りでは一台車が上ってきただけだった。富士宮の街が見えるところまで下ると、素晴らしい富士山が大きく明るく聳えていた。まだ残る雪が眩しい。富士山はどこから見ても富士山だが、富士宮辺りで見る富士山にはいつも特別な感銘を覚えるのはなぜだろう。
 国道139号を走ってもつまらないので手前の国道414に右折して白糸の滝方面に向かう。田んぼには水が張られて、陽光が燦々と降り注ぐ中、富士山に見守られながら農作業が始まっている。
 白糸の滝辺りに近づくと見慣れた風景になる。白糸の滝に寄ろうかとも思ったが、それよりも県道71号線の走りを楽しむことにした。途中むめさんの前を通り過ぎながら、稲子で昼食を我慢してここで食べればよかったと思ったが、それでは親切に道を教えてくれたおじさんやおばさんに申し訳ない。
 71号線はいつもながらの快走路だった。オートバイともすれ違う。しかし、久しぶりに来たら、富士山の眺望が最高のポイントがありいつもそこで車やオートバイを停めて写真を撮るのだが、観光牧場の施設が新たにできていて、お客を呼び込むために道路近くまで濃い茶色の牛を放牧しており、出入り口で危険なので車の駐車、撮影のための駐車は止めてくださいと看板がでていた。もう20年も前から富士山の撮影をしてきた場所なので、こちらが優先権があるはずだとばかり腹が立ったが、もちろん優先権などあるわけがない。看板に反発したわけではないが、交通量がそんなに多いわけではないし、とくに危険とも思えなかったのでオートバイを路肩に停めて写真を撮った。それにしても、走りながらいつの間にかやけに観光化が進んでいるなあと今更ながらがっかりした。
 鳴沢の道の駅でトイレ休憩。駐車場はいっぱいだった。まだ連休が続いているようだった。
 外国人観光客ばかりがめだつ河口湖の街を抜けて(疲れていたのだろう、途中道を間違えてしまった!)御坂越えで帰ることにする。疲労が蓄積してきたのか御坂みちの長い坂道が延々と続くかのように長く感じられた。もう無理だと思ったので中央道一宮御坂インター手前のコンビニで休むことにした。ベンチに腰掛けて甘い洋菓子とコーヒーを飲む。眠れるものならばいっそ眠ってしまいたかったが、疲労の余りかえって眠れそうになかった。
 20分ほど休んで出発したが、帰り道も長く遠かった。

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