越前海岸ツーリング(3日目)1

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

2008年9月11日(木)
 遅くまでツーリング日誌を認めていたにもかかわらず5時過ぎには目覚めてしまった。朝食は8時ということなので散策することにしたが、玄関の鍵を開けて表に出ると朝靄がたちこめている。太陽もまったく見えない。
 バス通りである府道12号線を右側へ、大野ダム方面に向かって歩く。小一時間歩いたところに石田家住宅という重要文化財の藁葺き屋根の民家があるようだが、とてもそこまでは歩けない。しかし、のどかな風景の中を歩いていると、一軒だけすてきな藁葺きの民家が道路から少し下った場所に建っていた。人が住んでいる気配はないが、荒れ果ててもいない。何枚も写真を撮った。
 散歩から帰ると囲炉裏にはもう朝食の準備ができていた。朝食は湯豆腐などもあり、胃にやさしい献立がうれしい。ご主人に帰途のルートのことで質問すると、自分たちが東京方面に行くときには、やはり国道162号線で小浜方面に向かい、琵琶湖の北部を通って、北陸道の木之本インターから高速にのるという。北陸道にのれば、南に下って岐阜名古屋方面にも行けるし、北に上って福井県方面にも行けるわけで都合がよい。食後牧師さんご夫妻と楽しく語らう。夫妻は京都でもう一泊するということだが、その費用は娘さんが出してくれたとうれしそうに話していた。
 出発は9時半になってしまった。民宿の奥さんが藁葺き集落を見に行きますかというので気持ちが動いたが、今日は長旅になるので諦めることにした。また女房を連れてきますからと答えたがお愛想ではない。前日の阿さひの女将にも同じことを言ったのは、旅館佇まいやサービスが気に入ったからで、女房が希望すれば再訪したいし、またツーリングできて裏を返したい。
 やはり思った以上に疲れているのだろう。出発早々大失敗をしてしまった。調子よく走り始めてすぐ、あれ、そういえば一眼レフカメラをオートバイのサイドケースに入れただろうと不安に襲われた。部屋から持ち出したことは記憶しているが、サイドケースに入れた記憶がないのだ。オートバイを停めていた場所に忘れたに違いない。ユーターンをしようとしていると、牧師夫妻の車が通り過ぎ、奥さんの方が手を振っているのが見えた。こちらも手を振ったが、カメラのことが気がかりでしかたがない。引き返すと、何と道路に黒いものが落ちている。サイドケースに入れようとして蓋の上に乗せたまま走ってしまったのだ。あわてて路肩にオートバイを停めて拾いに行く。車に轢かれてはいないが、壊れているかもしれない。カメラケースから出して恐る恐るシャッターを押すと当たり前に起動した。試しに風景を撮影して液晶画面でチェックしたが問題ないようだ。カメラーケースに入れておいて幸いだった。
 国道162号線を昨日とは逆方向にたどる。今日も暑くなりそうだが山間部の風はまださわやかだ。やはりこの国道はみな飛ばすようである。交通量こそ少ないが、いや少ないからこそ飛ばすのだろう。昨日も気がついたのだが、峠のワインディングでは高速で下って来る車がカーブでかなりふくらむので怖い思いがした。京都のドライバーは乱暴なのだろうか。リスのような小動物が轢かれていた。中田庄の道の駅でしばし休憩。コーヒーを飲みたかったのである。
 小浜市国道162号線に別れを告げて国道27号線に右折。三宅というところで国道303号線若狭街道)に合流し琵琶湖方面に向かう。この若狭街道沿いには古い町並みが保存されている場所もあるようだが、今日はここもパスである。しかし、数年前のことで記憶は定かではないけれども、山陰地方の海岸を走ろうと、若狭街道を小浜に向かって走っていたときのことがなつかしい。オートバイは初代セングレンド号であった。
 琵琶湖の湖岸道路に出たので北に向かって走る。今津浜という標識があり、右手の松林の向こうに琵琶湖の青い湖面がのぞく。琵琶湖の風景を楽しむ時間がないのが残念だ。気温がかなり上がってきたのでコンビにでミネラルウォーターを買って喉を潤す。ずっと着てたベストもさすがに耐えがたくなったので脱いだ。
 一度走った風景はなぜか記憶に残っている。山陰ツーリングのときにこの道は走ったことがある、ここにオートバイを停めて写真を撮ったなあなどと思い出しながら琵琶湖の北端を走っていると、やがて木之本インターの入り口に到着した。
 木之本からは躊躇なく福井方面に向かう。ツーリングの場合、往復とも同じルートを走ることはめったにしないが、今日は北陸自動車道を福井まで行き、2日前のルートとほぼ同じルート、つまり大野市から九頭竜湖を抜けて岐阜の白鳥まで走ることに決めたのである。今回も最初は別のルートを予定していたが、中部地方を縦貫する158号線は、東から西に向かっては2度走ったことがあるものの、西から東に走ったことがなかったのである。ツーリングで同じ国道を往復することは避けるけれども、一本の国道を知るためには当然往復する必要があるのだ。
 北陸道にのってすぐ賤ヶ岳SAで休憩する。もう昼の時間だったが、今日の昼は大野の福そば本店で食べることに決めていた。それよりも、今回の旅は会議を欠席して出てきたのだが、職場に書類を検討して意見を添えて送る必要があったものの、大野の旅館阿さひも美山の木むらもイーモバイルの圏外だったものだから、委員長への約束がはたせなかった。そのことがずっと気になっていたので、あるいは高速のSAならば繋がるだろうと期待したのだ。木陰に腰を下ろしてコンピュータを膝の上で広げて接続すると見事繋がり、すでに締切りは過ぎているのかもしれないがとにかく書類を送ることができた。
 近くの木陰にビニールを敷いて3人連れの親子(といっても娘はもう二十歳過ぎだ)が弁当を食べていたが、トイレに行って帰ってきたおやじさんが、八王子から来たのかい、おれもハーレーに乗っているんだ、体が小さいから****(よく聞き取れなかった)だけど、息子が4人いて、そいつらと十年ぐらい前までは毎年北海道に10日ぐらい行っていた、住まいは伊豆だけれどねと、聞かれもしないことをどんどんしゃべってくる。伊豆からずっと奥さんと娘さんと退屈な時間を過ごしてきたものだから、オートバイで走っているぼくがうらやましくてならないのだろう。その気持ちはよくわかる。
 大野の福そばの電話番号をナビに打ち込むと到着は2時近くだという。昼食にはちと遅いが、ここは空腹を我慢して名物のおろしそばを食べようと、福井インターを目指して急ぐ。途中、右手に敦賀湾だろうか海が見えたが、単調な時間に耐えながら走る。福井がやけに遠く感じられた。